輪廻が結んだ夢のカタチ
遠い過去の約束を繋いで、心を通わせた日。
ジョセフを決して離すまいと、改めて心に誓った。
プロポーズ後のシーザーの行動は、早かった。
二人で荷物を纏め、以前から用意していた新居へ夜逃げに近い形で引っ越した。
場所は、これまで二人が暮らした街から離れた片田舎。
誰もしらない土地で、新たに家族としてのスタートを切るのだ。
住み慣れた家を出る際、寂しそうに振り返ったジョセフの手を強く握った。
不安かと問えば、首を横に振って否定した。
握り返された手が、彼女の心を表していた。
もう離れることなど出来ない。
確信が互いの胸の内にあった。
必要無いと主張するジョセフを説き伏せ、新居に向かう途中の村にあった寂れた教会で二人だけの結婚式を挙げた。
純白のドレスとヴェールを纏う少女は美しくて、見惚れたと本音を溢したら、からかうなと真っ赤な顔で睨まれた。
その頬を撫で、薄くルージュが塗られた唇にキスを贈る。
左手には、揃いの指環が輝いていた。
当初は難色を示していたジョセフも、最後には幸せそうに微笑んだ。
その笑顔が愛しくて、これから先、共に過ごす日々に感謝した。
二人で作る未来。
いつから準備していたのか。
ドレスや引越し先のことをジョセフに尋ねられ、曖昧にはぐらかした。
聞かれて困ることでは無いものの、呆れられたり、最悪怯えられても困る。
彼女が生まれた時点でシーザーが記憶を持っていて、その上で育てたことを既に知られているのだけれど。
初めてジョセフを抱いた日、言い得ぬ幸福感が胸に溢れた。
男を知らない身体に自分という存在を何度も刻み込んだ。
これまで抑えていた反動もあり、余裕は無いに等しかった。
ジョセフは痛みと慣れぬ快感に顔を歪め、それでもシーザーへと手を伸ばした。
意地らしいその様に愛しさが募り、一回り小さな身体を抱きすくめ、夜が明けるまで愛を囁いた。
その後も思春期のガキかと自分でも呆れる程、毎日のようにジョセフを求めた。
二人を隔てる隙間を埋めるように何度も抱き合った。
証が欲しかった。
二人を繋ぐ確かなカタチが。
その日も当たり前のようにベッドに押し倒すと、批難の眼で見られた。
昨日、荷物を届けにきた男と楽しげに話している様に嫉妬して、少しばかり手荒に扱ったことをまだ怒っているらしい。
ついこの間は優しく扱うな。自分は壊れ物じゃないと腹を立てていたくせに。
我が儘なお姫さまである。
「子供に手ぇ出して良いのかよ」
意地悪く尋ねるジョセフ。
反撃のつもりなら、それは意味を成さない。
「もう子供じゃないだろ、お前は」
シーザーが熱っぽく耳元で囁くと、ジョセフが僅かに震えた。
潤んだ眸に睨まれても、怖くはない。
相手を煽るだけだと教えたのに、学習していないようだ。
仮に態と誘っていると言うのならば、乗らない手はない。
目尻や額、鼻や頬にキスの雨を降らせ、残る唇を舌で割って呼吸を奪
う。
縮こまった舌を突くと、おずおずとジョセフの方から絡めてきた。
「んっ…ふっ」
吐息と共に漏れる艶やかな声。
腕は、シーザーのシャツをしっかり握っている。
開かれた眸は相変わらず、強い光を宿したまま睨みあげていた。
素直じゃないのが、可愛い。
些細な抵抗を無視し、寝巻きを開けさせて首筋や鎖骨を唇で辿る。
既に鬱血して色の変わった場所へ上書きするように吸い付いた。
手に収まらない胸を形を変えながら揉み、ベビーピンクの頂きを指で摘み上げる。
反対を口に含んで下で転がすと、先刻よりも幾分か高い声が零れた。
決定的な刺激を与えないまま、ゆるやかな愛撫を続けていると先を求めたジョセフの脚が腰に絡む。
「…ジョジョ」
無意識の行動に内心ほくそ笑みながら、頬を撫でてキスを落とす。
どうして欲しいのか。
笑いを噛み殺して問いかけるシーザーに、ジョセフは無言で助けを求めた。
本当は言うまで焦らしたいところだが、昨夜の件もあって苛めすぎると完全に臍を曲げるだろう。
暫くお預けなんてのは、正直遠慮願いたい。
悔し気に眉根を寄せて、続きを促すように触れるだけのキスを仕掛けてきたジョセフの頭を撫でる。
「シーザーの性悪」
減らず口を叩く元気があるなら丁度良い。
胸に触れていた手を腹から下に滑らせ、脚の付け根をそっと撫でる。
蜜を零す秘部に直接指で触れた瞬間、ジョセフの身体が跳ねた。
何度も同じ場所をなぞり、指を中に突き立てる。
一本、二本と指を増やして掻き回す度、細い腰が揺れた。
「はっ…あっ」
部屋に響く水音と吐息混じりの喘ぎ声。
もう十分だろう。
シーザーが反り上がった己のモノを濡れそぼった秘部へと挿入する。
「ん、んんっ」
唇を噛みしめて声を殺そうとするジョセフの腰を掴んで、激しく揺さぶった。
悦楽に揺れる眸。
肌に滲む汗を舐めとって、腰の動きを速める。
「しぃ…ざ」
キスをせがむジョセフに口づけた瞬間、幸せそうに微笑まれる。
髪を掻きあげて、耳にチュッと音を立ててキスを落とす。
そのまま舌を這わせて、何度も名前を呼ぶ。
中途半端な状態で決定打を与えられないのが辛いのだろう。
切なげな眼差しを向けられ、シーザーは薄く笑った。
望むなら、いくらでもくれてやる。
ギリギリまで引き抜いて、奥を貫いた。
「あっ、ぁあ」
ジョセフの背中が、一層高い声と共に大きく撓る。
締め付けられたシーザーも、眉根を寄せて中に吐き出した。
絶頂に達している身体をゆるゆると揺さぶりながら、白濁を全て注ぎ込む。
惚けた表情のジョセフを抱きしめる。
擽ったそうに身を捩る彼女は、これで全て終わりだと思っているのだろう。
シーザーが出て行った瞬間、ホッと息を吐くジョセフの腕を掴まえ、うつ伏せにする。
肩や項にキスを落とすだけで、熱の冷めない肌は敏感に反応を見せた。
「…しつこい」
シーザーの意図を悟ったジョセフが、顔だけ振り返ってジトリと睨む。
その眸の奥に、劣情の色が宿るのを見た。
「まだイケるな」
眼は口ほどに物を言う。
ジョセフの抗議を無視し、腰を持ち上げて背後から自身を突き入れた。
二人分の体液が混じる其処に、零すまいと繰り返し熱を注いだ。
芽吹くその日を夢見て。
眠るジョセフの顔に疲労を感じとり、またやってしまったと後悔するのは毎度のことだ。
我ながら学習しないと思うものの、衝動を止められない。
自分から離れていくとは考えられないけれど、縛り付けたいという独占欲はいつまでたっても消えなかった。
相当、惚れこんでいる。
当たり前だ。
前世からの想いは、深くシーザーの心に根付いていた。
愛している。
だから、早くあの日の夢を叶えてくれ。
穏やかな呼吸を繰り返す彼女の腹をそっと撫でながら、シーザーは祈るように小さく呟いた。
やがて月日は流れ、二人が暮らす家に明るいもう一つの声が加わっていた。
ヨタヨタとした足取りで庭を歩く幼子。
力いっぱい手を振る愛娘に、シーザーは手を振り返す。
庭先にあるベンチでソワソワと娘の様子を心配するジョセフは、今にも飛び出していきそうだった。
「気持ちは分かるが、お前は此処に居ろよ」
「何でだよッ!?」
理不尽だ。
自分も娘と遊びたいと主張するジョセフの膝にブランケットを掛け、待機するように念を押す。
「転んだらどうするんだ?」
「そんなドジ踏むわけねぇだろ!」
「今朝、階段から足を滑らせた奴が言う台詞じゃないな」
あの時は、肝が冷えた。
シーザーが傍に居たから大事に至らなかっただけで、ジョセフだけだったらどうなっていたか。
考えると恐ろしい。
「この子の為だ。聞き分けてくれ、ジョジョ」
ぽっこりと膨らんだ腹を摩り、頬にキスして宥める。
覗きこんで心配そうに頼むシーザーに、ジョセフは渋々ながら頷く。
数か月後に家族がまた増える頃には、もう少し落ち着いてくれると良いのだけれど。
走り寄ってきた娘を抱き上げたシーザーの脳裏に浮かぶ、近い未来の情景。
家族並んで過ごす日々は、幸せに満ち溢れていた。